「半端者という生き方」会社をやめて岩泉へ移住した理由

 

こんにちは。逢見祥平(@shoheiomiです。

この度、会社を辞めて、岩手県岩泉町に移住することになりました。

 

そして、森林コンダクターという仕事をすることになりました。

そんな仕事聞いたことないぞ?一体なにするの?という方がほとんどだと思います。

 

それもそのはず、森林コンダクターという職業はここ、岩泉町にしかないのですから。

 

森林コンダクターとは

■業務内容
・森林コンダクター(2名)
森林整備と木材利用の両面から地域林業を振興するための体制づくり、仕組みづくり。
(岩泉の明日の林業をつくるプロジェクト(※1)事務、森林認証拡大事業、ウェブ等を活用した情報発信など)

■導入からのスケジュールイメージ
□スタートから3ヶ月:「スタートに向けた関係性の構築」
・岩泉町の資源確認
・町内のキーパーソンとの関係構築
・町内の既存事業の視察・実地体験
・短中期の目標のすりあわせ。
□3ヶ月~半年:「課題の整理とアクションのスタート」
・森林の多面的な資源を整理した中で、新しい取り組みのたねを見つけ、具体的なスケジュールをつくる。
□半年以降:「地域のチャレンジと自分のチャレンジ」
・町内の組織・事業者と連携し、新しい商品(体験等も含む)の開発に向けた具体的なアクションを起こす。

■期待する成果
・FSC森林認証(※2)及び広葉樹資源をキーワードに、地域木材の流通を地域に取り戻す。
・カスケード利用による木質バイオマスエネルギーの利用促進により地域資本資本の流出を抑える。
・カスケード利用による多様なニーズへの細やかな対応
・多様な広葉樹資源の利用による新たな価値創造、起業など雇用の創出

■補足
※1岩泉の明日の林業をつくるプロジェクト
・森林の多面的な機能を活かした新しい事業を立ち上げ、持続可能な林業の仕組みをつくるもの。
例)現在は広葉樹のほとんどはチップ材として利用されているが、広葉樹を使った新しい加工品や活用方法を生み出し、付加価値の高い商品をつくっていく等の活動を想定。

http://www.work-for-tohoku.org/list/95

岩泉町は本州一広い「町」なのですが、その93%が森林なのです。

一口に森林と言っても、人工林とか天然林とか、針葉樹だとか広葉樹だとかいろいろあって、それが混在している状態なんですね。

そのなかでも岩泉町は、広葉樹の天然林が多いのが特徴で、この広葉樹を使って町おこしできないだろうかというのが主題なのです。

しかし、戦後に成長が早いということで植林されたスギなどの針葉樹は国の方針により、どんどん使っていこうという流れになっていて、間伐の重要性だとか、その間伐材をつかったノベルティー、建材などの開発というのが盛り上がっているのですが、広葉樹はほとんどそういった話題はありません。ほとんどのところは手を出していないのですね。

針葉樹と広葉樹2

 

岩泉町も広葉樹はチップくらいにしか使ってないんですよ。

山側からしたら、需要がないから、それくらいにしか使い道がないということなんですが、実は結構需要はあるんですね。ただ、それを山側が知らないだけなのです。

逆に言えば、使いたい側が、きちんと情報を伝えていないという状況なんですね。そこのところをうまくつなげて、広葉樹をきちんと使っていこう、行き先(出口)をつくっていこう、というのが森林コンダクターの仕事です。

 

森林コンダクターになった理由

まず前提として、僕が働いていた、広葉樹を扱う木材業界の現状を紹介していきたいと思います。

僕は数日前まで、広葉樹をフローリングに加工するメーカーで営業として働いていました。広葉樹をフローリングに加工するメーカーって日本にも数社しかないのですが、多くの工場で、海外から広葉樹の原板を輸入し、加工するといったスタイルをとっています。

なぜ、海外から輸入しているかというと、海外の原板製造会社は大きなところが多いために、そこに発注すれば全てそろうんですね。つまり楽なんです。日本の工場は小さなところが多いので、同じ樹種の材料を集めようとしても、何社にも声をかける必要があります。

 

また労働力が日本より安いので、輸送コストをかけても、海外から持ってきた方が安いこと、環境保護が叫ばれる中で、とくに国内の広葉樹は伐採しにくい環境になっていること(一方で日本は世界最大の木材輸入国なので海外の違法伐採にも知らず知らずのうちに加担している)、乾燥までしてくれているので、その後の加工が楽であること、などが原因となり、海外からの輸入に頼ってしまっているんですね。

とくに最近では、われわれが海外に頼っている間に、国内の製材工場が閉鎖して、そもそも原板に加工するところが少ないという状況なのです。

木材の輸入2

*日本で手に入るフローリングは、東欧、ロシア、東南アジア、北米から木材を持ってきて、中国で加工するという製品が多かったりします。インターネットで購入できるようなものは、日本のメーカー品ではなく、輸入業者が海外から買ってきているというパターンが多いのです。

 

外材に頼っていてはもう成り立たない

しかし、状況は変わってきました。多くのメーカーが海外から材料が入ってこない!!どうしよう!?と騒いでいるんですね。なぜ海外から材料が入ってこなくなったかというと、

  • 違法伐採に対する関心が高まり、伐採禁止の場所が増えたことで、市場に出てくる材料が少なくなっていること
  • 新興国の需要が高まり、材料確保の競争が激しくなっていること(日本と世界のフローリング寸法規格がズレているので、わざわざ日本向けに原板を製材しなければならず、めんどくさい)
  • 世界の木材が集まり加工していた中国の労働賃金が上昇することで、中国から撤退する業者がでていること(日本のメーカーは中国からたくさんの材料を買っていました)
  • 為替の変動で価格の上下が激しいので使いにくい

というように、世界の情勢が深く関わっています。

IMGP3405

一方で、最初に話したように、国内の広葉樹は需要が少ないのでチップにされているのです。これっておかしくないですか?その部分が僕はすごく引っかかるんですよ。

じゃあ、これから、日本のメーカーが国内の広葉樹を使うようになれば、山が潤っていくかというと、それも違うような気がするんです。それは山側の立場が弱くなりすぎたので、価格決定権をもっていないということなんですね。買いたたかれてしまうんです。だから材料を出しても出しても儲からない。儲からないとつづきません。後継者もきませんよね。それこそ「都会に出てしっかり給料出る会社探すわ」となってしまいます。

だから、僕はしっかり利益が出て、永続的につづけていける広葉樹循環の仕組みをつくりたいのです。そのためには、山側が製品づくりまでおこない、ここの木を使ってみたいな、この製品おもしろいなと消費者に思わせることが必要だと思います。消費者に向けて情報発信する必要があるのです。

 

これまでの木材業界って、消費者(実際に使う人)には意識があまり向いていないんですよ。

フローリングメーカーであれば、直接のお客さんとなる、工務店、木材屋、設計士、商社の方々とお話しするのですが、実際に家にフローリングを使っていただく消費者の方とお話することはありません。

工務店、木材屋、設計士、商社をすっぽかして直接消費者の方と話す(売る)というのは、業界的にタブーなんですね。だから、本当に欲しい製品の情報も伝わってこないし、消費者の方も、フローリングのメーカーなんて全く知らないのだから、選びようがありません。

 

半端者になって全体をみてみたい

つまりですね、川上(山側)・川中(製造メーカー)・川下(消費者)と、それぞれに接点がないことが原因で、お互いに何を望んでいるのか、どのくらい需要があるのかわかっていないんですね。川上・川中・川下それぞれに専門家が沢山いるのですが、全部を何となくわかるという人はほとんどいないんです。しかも、扱う業者が少ない広葉樹はなおさらです。

半端者1

 

だから僕は、全体をなんとなくわかる半端者になって、お互いをつなげていきたいと思うようになりました。もともと何でも知りたいという性格なので、今いる川中だけでなく、川上も川下も知りたいという思いもあり、全部に関われるところに身を置きたい、そういうところがなければ、自分でつくりたいと考えるようになりました。僕は川中でもフローリングのことしかわからないまま仕事をしていくことが嫌だったんです。欲張りかもしれないし、半端者かもしれないけど、もっといろんなことを知りたい、そういう思いがどんどん強くなって、もう抑えきれなくなっていたのです。

 

そんな状態で半年くらいたった頃でしょうか、岩泉町が広葉樹を利用した地域振興を考えているということを知りました。話を聞いてみると、僕が感じている業界の課題が、そのまま岩泉町でもあてはまり、その解決のために広葉樹を利用する仕組みをつくっていきたい、でも、出口が見つからなくて困っている、だからその仕組みを一緒に作っていく人を探しているということでした。川上・川中・川下という従来の枠組みにとらわれずに、すべてを巻き込んでいける仕組みをつくる。これって僕にピッタリじゃないですか!?僕の経験も活かせるうえに、これからやりたいということも実現できる。これは絶対やるべきだ!と思って岩泉町の森林コンダクターになることにしたのです。

 

会社への感謝と本音

以前いた会社では、本当に親切にしてもらったし、17時に帰ろうと思えば帰れたし、良い環境だったと思います。僕がこの世界をもっと知りたいと思ったのも、岩泉に行こうと思ったのも、すべてそこで経験してきたことがあったからです。僕は特に大学で森林や木材のことを勉強してきたわけではないので、今の知識はすべてここで教わったものなのです。だからとても感謝しています。

でも、もっと全体を知りたかった。スピード感をもってどんどん新しいことをしたかった。専門家と半端者の組み合わせで、広葉樹を永続的に使える新しい仕組みをつくりたかった。僕は多分、自分で自分の未来を作りたいのだと思います。会社に依存しきるのではなくて。

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前の職場では、将来が見えすぎていたんです。5年、10年経っても今と変わらないことしているだろうし、その先もずっとそうかもしれない。現状に満足しているなら、それでいいのかもしれないけど、そうじゃなかった。

 

僕は将来が見えすぎないほうがいい。失敗する可能性もあるけど、それはある意味、予想してない方向に転がるってことだから、その度に新しいチャレンジができる。そういう状況にワクワクするんです。もちろん全く先が見えないのも怖いですよ。だから、僕が勝負できる舞台を選んだんです。少なくとも、僕は広葉樹の需要があることを知っている。だから全く未来が見えないわけじゃない。そこは本当に微妙なラインなんですけど、その微妙なラインにいるときが、もっとも自分が生き生きとしていられる、そう思っているのです。だから、僕は新しい世界に飛び込む必要がありました。

 

岩泉町のみなさまへ

とは言っても、不安があるかないかといわれたら、不安はあります。僕は不器用な人間ですから、すぐに打ち解けられないかもしれないし、みんなに好かれるような性格でもありません。だからすぐに受け入れていただけるか、わかりません。でも、僕ができることは全てやるつもりです。自分は地域活性の専門家でもないし、林業のことも素人同然です。だから、皆さんの知識・経験を教えていただきたいのです。必死に勉強したいと思います。そして僕のもっている知識とアイデアを融合させて、岩泉町を盛り上げていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

長くなってしまいました。最後まで読んでくださったみなさん、ありがとうございます。

 

では。

1 COMMENT

若生 和江

奥州市の若生です。岩手の森林づくり県民税の事業評価委員になったことをきっかけに、県内の森づくりに関わるひとや地域の応援ができればと思って活動しています。森の全体が見渡せる人の存在の必要性、まさに感じていたところでした。今後とも何かしら情報交換ができればと思います。よろしくお願いします。

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