【樹木図鑑】花だけじゃない。樹皮も木材も美しいヤマザクラ。

桜といえば、ソメイヨシノのように植栽されたもののイメージが強いですが、このヤマザクラは山々に自生しています。明治期にソメイヨシノが広がるまでは、お花見の対象はヤマザクラであったと言われています。赤い色の若葉が花と同時に開花するため、ソメイヨシノよりも赤っぽく見えます。

ヤマザクラは花だけでなく、樹皮や木材も美しく、古くから茶筒や装飾建具などに使用されてきました。

学名Prunus jamasakura
別名
分類バラ科サクラ属 (落葉高木)
分布本州、四国、九州、朝鮮南部

 

角館の樺細工を支えるヤマザクラの樹皮

樺細工といってもピンとこない方が多いかもしれませんね。名前はよくわからなくてもこのような茶筒を見たことはあるのではないでしょうか。

wikipediaをのぞいてみると

樺細工(かばざいく)は日本の伝統的な木工工芸品の樹皮を利用して作られるものであり、茶筒や小箱、煙草入れなどに利用される。樺細工という名前であるが、実際に類が利用されることはない。

引用:wikipedia

ということですが、樺細工は秋田県の角館市に残る伝統工芸で、その他の地域で製造されることはまずないそうです。限定されて地域でしかその製造を認められないので、まがい物・パチモノの流通を防ぎ、伝統を守っているのですね。

そんな樺細工に使われる樹皮は、生きているヤマザクラの木から剥がされ、1〜3年乾燥させてから製品として使われるようです。

 実際にヤマザクラの木を剥がしてみたことがありますが、梅雨明けから夏場にかけての時期だと、まるでバナナの皮のように剥ぐことができました。剥いだ後、ヤマザクラの樹皮は再生していきますが、完全に元どおりになるのではないようで、一度剥いだ後に再生した樹皮は見た目も美しく貴重なため、高値で取引されるようです。

浮世絵を支えたヤマザクラ

江戸時代に流行し、今では海外からも高く評価される浮世絵が世に広まったのは、木版画の技術が確立したためと言われています。その木版画の木版に使われていたのがヤマザクラの木です。ヤマザクラの材は緻密で、彫り物には最適だったのです。

江戸時代は浮世絵を影で支えた木材でしたが、現代ではその材の美しさに注目が集まり、家具やフローリング材に利用されています。桜の花びらのようにほんわりとした赤みが美しいですよね。不思議なことですが、ヤマザクラは花を咲かせる前に枝に赤い色素を溜め込んでいるようで、開花前の枝を染め物に使うと綺麗なピンク色に染め上がることが知られています。