新たな伝統をつくる。台風災害も乗り越えた漆の林。

漆の木ってみたことあるでしょうか。漆器のイメージはあるけれど、木自体は知らないという方も多いでしょう。それもそのはず、以前は田んぼの脇などに植えている時があったそうですが、今では街中で見かけることはまずありません。漆=JAPANと言われるほど日本を代表する産物にもかかわらず、現在はその98%が中国産であり、日本で実際に漆を書いている人はせいぜい数十人。それもそのほとんどが岩手県の二戸市浄法寺に集中しています。

出展:浄法寺漆産業
皆さんがイメージする漆はこのような漆器になった状態ではないでしょうか

そんな珍しい漆の木が岩泉にもあるのですが、台風10号による災害の後、どうなっているか確認できていなかったので、様子を見に行きました。

 

岩泉にも全国有数の漆林があった

同じ町内とはいえ、車で走らせて30分ほどかかります。とはいえ、岩泉は端から端まで4時間くらいかかるところもあるそうなので、まだ近い方なのですが・・・

たどり着くとそこは雪景色。全くの油断なのですが、漆の林は山の中。街中はもう雪はありませんが、山はまだ融けていません。ここからはなんと・・・歩きです。長靴を持ってこなかったので、運動靴でそのまま山中を歩いて登ります。

人が歩いた足跡を踏むように歩いていきますが、もう靴の中はビショビショ。というか氷だらけです。

歩くこと15分。ようやく漆の生えている現場にたどり着きました。台風の被害もなく大丈夫そうです。

あ〜よかった。これで一安心です。

ここの漆は他の地域の漆より背が高いそうです。ここの漆はかなり密植しているらしく、陽の光を求めてどんどん上に伸びていく必要があったということ、それにこの地があまり日当たりが良くないことも関係しているかもしれません。

漆は、日当たり・水はけが良いところを好むそうで、ここは小川もそばに流れていて、水はけもよくはありません。そういう意味では漆にとって最も適した土地というわけではないのですが、それでも十分に漆を採取できる程度に育っています。

ちなみに漆一本から採取できる漆の樹液は200g程度とのこと。漆は15年程度で採取に適した状態になるので、木材として使用できるまで50年近くかかる他の樹種に比べると非常に回転が早い樹種ではありますが、15年で200gと考えると、いかに貴重なものかお分かりいただけると思います。

岩泉にはおそらく3000〜4000本ほどあるので、全部はうまく掻き出せないとしても、うまくいけば数百キロは採取できる計算です。もしそれだけ採取できるのであれば、漆かきは十分な季節労働になります。専業でやるとなるとハードルは高いですが、アルバイトの一つとして確立させていく道筋もありでしょう。

中国産が市場を席巻している漆業界ですが、国産漆にも明るい兆しがあります。文化財の修復は国産漆を使用しなさいということを国が宣言したことで、急速に国産漆の需要が高まっているのです。今まで採取しても価格が安い中国産に追いやられて、需要がない・・・という時代もありましたが、今後はどんどん需要が増えていくでしょう。岩泉から採取された漆が国宝や重要文化財の修復に使われる可能性があると考えると、誇りに思えてくるものです。

今年は漆でも色々と進展がありそうです。乞うご期待ください。

 

サイエンティスト オオミの森の研究室

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