この記事では、林業・木材業界においての「国産」とは一体なんなのだろうか、という点について、木質建材メーカー▷地域の木材団体▷木工作家という経歴で働いていた立場からの知見を示していきたいと思います。
「国産」というとどういうものを想像しますか。「国産」の野菜、肉などの生鮮食品であれば、日本国内で生産されているということを意味しますよね。この「国内で生産」というのが、ポイントです。Made In Japanですね。
林業・木材業界における「国産」
ではここで問題です!木材業界の場合、「国産」という言葉はどのようなことを意味するでしょうか?
まず想像するのは、日本の山で伐採された木材のことでしょう。「国産」という条件で、丸太を取引するならば、まず間違いなくこの意味の木材が供給されてくるはずです。
しかし、木材の加工品ならば、どうでしょう。先ほどからいうように、国産という言葉は、「国内で生産された」という意味合いを持っています。言い直すならば、「国内で加工された」ということです。
もう、勘の良い方はお気づきかと思いますが、国内で加工していれば、海外から輸入した木材であっても、「国産」なのです。
えっ!?と驚かれたかもしれませんが、事実、このような意味合いで「国産」という言葉を使っているメーカーはたくさんあります。そのようなメーカーが国内の山で伐採された木材を加工するならば、純国産という言葉を使います。
よく考えてみると、こういうの結構ありますよね。例えば、国産ジーンズと言ったら、国内で生産された品質の良い物、職人さんが一つ一つ手作りした愛情を感じられるもの、というようなイメージです。実際のところ、原料であるコットンは輸入したものがほとんどなので、これも木材と同じ意味で「国産」という言葉を使っていることが分かります。
だけど、それぞれの分野で期待されている「国産」って違うと思います。ジーンズだったら、国内の職人さんが生産してくれることそのものに価値を感じますよね。裁縫の細かさだったり、フィット感だったり。そのストーリーを感じられるところや、品質がいいということが「国産」の価値なのです。
だから、ジーンズの場合「国内で生産された」という意味で「国産」を使うのはありですね。
では、木材はどうでしょう?国産に何を望まれているでしょうか。
僕が思うに、木材に期待される「国産」って、やっぱり日本の山で伐採された木材なのだと思います。木材って、素材そのものの存在感が大きいので、家具にしても、フローリングにしても、この色合いがいいなとか、この木目が好きだとか、木の表情でかなり印象が変わってきます。
確かに昔のように、それだけで売れるということはありませんが、まだまだ素材そのものにおかれる価値が他の素材よりも大きい。その木材が「国産」と言っておいて海外の木材だったら、なんだかなあーと、思ってしまうんですね。とはいえ、ジーンズと比べて国内で加工できる業者なんてたくさんありますから、それ自体を売りにしていくことは難しいのです。
ふたつの「国産」を当たり前に
こんなのどうでしょうか。
日本の山で伐採された木材でつくられた「国産材」フローリング、今ならお安くお買い求めいただけます。なぜなら、賃金の低いベトナムで製造されたからです!!
実際にある話です。えっ!?ビックリでしょう。今度は木材自体は日本の山のものですと、でも、生産は海外ですと。「国産」といえば、「日本の山で伐採された木材」だとすれば、海外で安く加工させて、日本に持ってくれば、安く売れます。お客さんも「国産材」のフローリングが安く買えるんだからみんなハッピー!!!
事実、このような考えの業者も存在します。「国産」という言葉は、こんなにもあやふやなものなのですね。
じっくり見て気づいた方も、いらっしゃると思いますが、「国産材」と後ろに「材」がくっついた言葉が出てきました。これは、上の話のように、日本の山で伐採された木材を指す言葉です。「国産」と「国産材」では意味が少し違うんですね。実にわかりにくい。
今までは、すべてプロ同士の取引の中で、お互いに木材業界ってのはこういう慣習でやっているんだってわかっていたからこんなにあやふやでも成り立っていたんですよ。
でもこれからは、どんどん一般の消費者との接点が多くなってくる時代です。だから素人にもわかりやすいものにしていく必要があります。
僕は、「国産」といったら、日本の木を国内で加工した「国産」が当たり前に出てくるようにしたい。そこを統一しないと長い目で見れば、信用を失うことになると思います。
これからは、日本の木を国内で加工した「国産」の時代です。世界中が競争相手になる時代だからこそ、その地域や会社の特色を出した製品の開発や他とどう違うのかということを情報発信していくことが必要なのです。
これから地域材を地域内で加工するというのはどんどん増えていくでしょう。そこの部分でも競争が生まれるので、どのようにして勝ち抜いていくのか地域力が問われます。安易に価格競争に走っても、今度は海外との競争になるわけですから。やっぱり独自性を出してなるべく高く売っていける商品を作るしかありません。
ヨハク木工舎でも、国産材を僕自身が一貫して加工した器を提供していきます。
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多くの人にとって身近な存在な木。でも意外と知っているようで知らないことも多いのではないでしょうか。木にまつわることをあらゆる切り口から紹介していきます。知ることで身近な木や木工品に対する愛着も深まるはずです。