お家にある木の器や家具・・・誰が作ったか、どこの木で作られたのか意識したことがありますか。普段使っている木工品がどこから来たのか知ることができれば、より愛着を持てるかもしれません。
【工芸と林業】原材料から顔の見えるものづくりが出来ないだろうか
上の記事で、原材料から顔の見えるものづくりをしたいということを書きましたが、そう思うようになったのは、木材業界で働いていたときに感じていた違和感があるからです。
少しづつ改善はされてきていますが、日本は欧州に比べて、違法伐採に対する認識の甘さがあります。違法伐採されたのではないかという疑いがある木を使った木工品や建材が存在しています。
違法伐採とは
違法伐採とは、各国の法令に違反して行われる森林の伐採のことを言います。木を伐採しすぎると森林が荒れてしまったり、生態系が崩れてしまう恐れがあることから、各国で法令が定められています。しかし、その法令を無視して伐採されている例が相次ぎ問題になっているのです。
特に極東ロシアでは違法伐採の問題が深刻です。
輸入製品の原材料が絶滅危惧種の動物を保護するため伐採禁止となっている樹木であることを理由に、フローリング木材販売の米最大手、ランバー・リクイデーターズ・ホールディングス(LL)が1日、米裁判所から罰金1320万ドル(約15億5500万円)の支払いを命じられた。問題となった製品はほとんどが中国製のフローリング木材。
米司法省は同社が販売する中国製のフローリング木材の原材料に、ロシア産モンゴルクヌギが使用されていることを指摘している。この木が生える森林地帯は絶滅危惧種のアムールトラやアムールヒョウなどの生息地となっているため、モンゴルクヌギも保護対象に指定されている。
ロシアとウクライナの戦争により状況は刻々と変化していますが、日本はこの極東ロシアから多くの木材を輸入していました。
昔は直接取引きしていたようですが、中国やEUを通して購入しているパターンもあります。人件費の安い中国で加工させてから日本に輸入した方が安いのも一因です。
ただ、中国を通すことで、この材料は本当に違法伐採された木材なのか、そうじゃないのかわかりにくくなってしまうのですね。
一応、違法伐採じゃないよという証明を発行してもらうことはできるのですが、どこまで信用できるものかわかりません。上のニュースもそれを証明しています。
日本のメーカーはその証明書を信じて・・・というよりも、もしかしたら偽装している可能性はあるよなという思いを持ちながら、中国から来た材料を使っているという状況が続いていました。その危険性に気づいた企業は木材や製造拠点を国内に移し始めていますが、多くの企業ではそこまで行っていないのが現状です。
ここまで違法伐採の疑いがある木材が蔓延してしまったのは「安さ」ばかりを追い求めてしまった結果なのではないかと思います。正直日本人には産地だとか違法伐採だとか、そういう意識はまだ広まっていないので、安いものに流れてしまうのは当たり前の話です。企業もいかに安くお客様に提供するかという部分を追求するために、そのあやふやな部分に目をつむっていたというわけです。
私たちが意識することで変わる
しかし、少しずつ流れは変わり始めています。「安かった」とわざと過去形にしましたが、やっぱり中国も人件費が上がって、以前ほど中国で製造するメリットがなくなってきました。一部の企業では次はベトナムだ〜!!と叫んでいるようですが、これを機会に日本にもう一度生産拠点を移そうという企業も増えています。
確かに安いのは、消費者にとってありがたいです。でも、それが違法伐採によって成り立っているものであったとしたら・・・
自分が買おうとしているものは、どこから来て、誰がつくったものなのか、もっと消費者が意識することが必要なのです。そうすることで粗悪なものは淘汰されていきます。
木工品を選ぶ際は、産地も意識してみるといいかもしれません。
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木にまつわる基礎知識
多くの人にとって身近な存在な木。でも意外と知っているようで知らないことも多いのではないでしょうか。木にまつわることをあらゆる切り口から紹介していきます。知ることで身近な木や木工品に対する愛着も深まるはずです。