伝統工芸職人がillustratorでうつわをデザインする

うつわってどうやってデザインしているんだろう?と考えたことのある方はあまりいないと思いますが、職人の世界といえば、「感覚の世界」というイメージが強く、あまりデザインと結びつかないと思います。

作るものを事前にデザインする人、作りながら決めていく人、感覚に任せる人、様々な作り手がいます。

それぞれの作り方は、その作り手が作っているもの、作りたいものがどんなものなのか?ということに左右されます。

例えば、「機能性の高いもの、使いやすいものを作りたい」と思ったとして、それを完全に感覚で作り上げるのは天才でもなければ不可能です。

・持ちやすいか
・スタッキングできるか
・使いやすい大きさか

など、機能性から考えるならば、事前にデザインしなければ良いものを作ることは難しいでしょう。

逆に、見た目の美しさやものの持つ雰囲気を重視するのであれば、デザインされすぎたものよりも、感覚や感性をぶつけた作品の方が、より人の心を揺さぶるものになったりします。もちろん、この感覚や感性を日頃から磨いていくことは必須ですが。

「使いやすさ」と「手の届く価格」

ヨハク木工舎では、基本的には事前にデザインする方法を採用しています。なぜなら、普段使いできる使い勝手のいいものを手の届きやすい価格で提供したいという思いがあるからです。

<使いやすさ>

例えば、お椀のような家族全員で使うものは、一家に4つ5つと揃える必要があるので、収納しやすいかという点も使い勝手を考える上で重要なポイントです。

この写真のように綺麗にスタッキングできるものは、事前にきちんとデザインしなければ作ることができません。

また、お椀のように持って使ううつわは、持ちやすい大きさであるかという点も考えなければなりません。

<手の届く価格>

芸術性に高い作家もののうつわは数万円すうることもザラです。それだけ高価なものになるとなかなか一般の家庭では手が出せないと思います。

ヨハク木工舎は、いわゆる高所得者だけではなく、一般の家庭の方でも、少し奮発すれば購入できる価格帯で商品を提供したいと考えています。そのためには、ある程度量産できる型を作り、生産量を増やさなければなりません。一日一個の世界では、高い価格で販売するしかないのです。

だからこそ、綿密に器の設計図を作り、その型を使って生産する方法を採用しています。

illustratorを使う

では、実際にどのようにうつわをデザインしているのかお見せしたいと思います。

このようにillustratorを使ってデザインしています。なぜillustratorを使うのかというと、手書きよりも正確な寸法で設計できるからです。

もっと縁を薄くしようか、高台を高くしようか、など考えながら、それこそコンマ数ミリの単位で修正していきます。

ほんの少し寸法を変えただけでもきれいにスタッキング出来なくなったりするので、この段階でしっかりした型を作ることが重要です。

そうやって、試行錯誤しながらデザインしたものを、型にするためにアクリル板に写していきます。レーザー加工機を使い、正確な寸法で切り取ります。

アクリル板で作った型を旋盤にセットして、倣わせるようにして挽くことで、何度でも同じ形で挽くことができるのです。

伝統工芸とillustrator、あまりイメージのない組み合わせですが、うまく活用することで、より良いものづくりを目指していきます。

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