木材活用推進は森林破壊なのか。国産材活用を考える。

国土における森林率は68%と世界第3位の日本。豊富な森林資源がある一方で、放置林の増加が問題になるなど、その資源を活用しきれていないと言われています。しかし国や地方自治体が積極的に林業政策を打ち出し、支援する中で、本当に日本の森林は活用されていないと言えるのか、また活用を推進することは、森林破壊になるのではないか。そのような疑問にデータを交えながら、回答していきたいと思います。

日本の林業・木材産業規模からみる森林の活用状況

 日本ドイツ
国土面積3,779万ha3,571万ha
人口1億2776万人(2005年)8,231万人(2006年)
森林面積2,512万ha1,110万ha
木材貯蓄量40億㎥34億㎥
木材生産量1,562万㎥4,000万㎥

出展:森林白書、BWI2による

EU諸国の中でも扇動的な役割を果たしているドイツは、林業・木材の分野でも先進的な取り組みをしている国として知られています。その国土は日本とほぼ同程度ですが、一方で森林面積は日本の半分以下と、特別に森林資源に恵まれた国というわけではありません。しかし、木材生産量(木材伐採量)を見てみると、日本の倍以上の生産量となっています。

ここで注目したいのが、森林の成長量のデータです。年間の成長量が生産量を上回れば、資源が枯渇することはありません。

出展:林野庁

平成27年度の人工林の森林の総成長量を見てみると4800万㎥であり、丸太の供給量は1679万㎥なので成長量の4割以下に留まっており、かなり資源の余裕がある状態だということがわかります。また最初に紹介したように日本は世界第3位の森林率を誇る森林大国なのです。資源がないとい言われる日本ですが、計画的利用すれば枯渇することのない資源を持っています。石油や天然ガスなど、他の資源と異なり、森林は毎年成長するので、永続的に活用していける資源なのです。

森林の活用は環境破壊か

森林の活用=環境破壊と連想されがちですが、本当にそうなのでしょうか。木材を切らなければ、他に代替のものを探す必要が出てきますよね。

例えば、木造建築の代わりにコンクリートの住宅を建てるとしましょう。木を伐らないのだから、環境に優しいのでしょうか。コンクリートの材料は一度取り出すと無くなってしまうものです。それに材料を取り出すには山を削り出したり、地面を掘ったりする必要があります。そこに生えている草木はもちろん伐採されますし、掘り出す際に使用する重機の燃料もどこか遠い国で掘り出されたものです。

このように考えていくと、木材を使わなくなることが環境を守ることにつながるわけではないということがお分かりいただけるのではないでしょうか。毎年成長する森林は、計画的に活用することで永続的な資源として利用することができるのです。

世界と日本の森林事情

森林が永続的な資源である一方で、その成長量をはるかに上回るペースで森林伐採が進む地域があります。特に東南アジアでは原生林の急速な減少による絶滅危惧種の増加や、伝統的な生活を送る少数民族の生活環境を大きく変えてしまったりと大きな問題となっています。

出典:熱帯林行動ネットワーク

東南アジアでは、その多くが輸出用の木材として伐採され、残念ながら、日本は多くの木材を輸入している国となっています。

世界有数の森林大国でありながら、自国の森林を活用せずに、世界の森林需要が集中する東南アジアから木材を輸入している日本。この歪な構造を変えていくには、山林所有者とって魅力的な山林経営のモデルを作り上げることで、日本の森林は素晴らしい資源なのだということを自覚していく必要があるのではないでしょうか。

このカテゴリーは

木にまつわる基礎知識

多くの人にとって身近な存在な木。でも意外と知っているようで知らないことも多いのではないでしょうか。木にまつわることをあらゆる切り口から紹介していきます。知ることで身近な木や木工品に対する愛着も深まるはずです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です